ウォーレン・バフェット流で検証するJT株の投資価値—深掘り解説
この記事では、日本たばこ産業株式会社(JT)の株式が投資対象として魅力的かどうかを、ウォーレン・バフェットの投資哲学を基に詳しく分析します。バフェットが株式投資をする際に重視するチェックポイントに沿って、JTの業績や財務状況を深掘りしながら、投資判断に役立つ情報を提供します。

肝臓ちゃんです!今日はJTを見ていきます!
ウォーレン・バフェットの考え方を見たい人はまずこちらを見てください!
※2024年10月27日の情報です。
1. 損益計算書に基づくチェックポイント
損益計算書は、会社がどの程度利益を生み出しているかを示す重要な資料です。バフェットは、長期的な安定成長と収益性を非常に重視します。まずは、JTの利益に関する指標を見ていきます。
① 純利益の一貫した成長があるか?
評価:△(一部不十分)
JTは長期的に見て純利益の安定成長は見られないものの、2020年からは回復基調にあります。この成長が持続するかが重要なポイントです。
純利益の推移(単位:億円)
年度 | 純利益 |
---|---|
2023年 | 4,823 |
2022年 | 4,427 |
2021年 | 3,385 |
2020年 | 3,120 |
2019年 | 3,616 |
2018年 | 3,874 |
2017年 | 3,967 |
- 解説:2020年を境に利益が回復しているものの、2017年から2019年にかけては減少しています。これは競争激化や市場環境の変化による影響と考えられます。長期的な成長が確認できるかどうかが投資判断のポイントです。
② 純利益率が20%以上か?
評価:×(基準未達)
バフェットは、高収益性の企業を好みます。純利益率が20%以上であれば、強い競争力と収益性を持っていると判断されますが、JTはやや届いていません。
純利益率の推移
年度 | 純利益率 |
---|---|
2023年 | 17.1% |
2022年 | 16.7% |
2021年 | 14.6% |
2020年 | 14.9% |
2019年 | 16.6% |
- 解説:JTの純利益率は高めであるものの、バフェットの基準である20%には達していません。しかし、15%を超える安定した水準を維持しており、完全に投資対象外とするにはやや早計です。
③ 粗利益率が40%以上か?
評価:〇(非常に優秀)
バフェットは、粗利益率が高い企業を好みます。これは企業が製品やサービスに価格競争力を持っていることを示します。JTは粗利益率で非常に良好な結果を出しています。
粗利益率の推移
年度 | 粗利益率 |
---|---|
2023年 | 56.8% |
2022年 | 59.0% |
2021年 | 58.8% |
2020年 | 57.1% |
2019年 | 56.7% |
- 解説:JTは、バフェットの基準を大幅に上回る粗利益率を長期にわたって維持しています。これは、JTのたばこ事業が非常に高い価格競争力を持っていることを示しており、強力なブランド力と市場シェアが背景にあると考えられます。

損益計算書は1勝1敗1分ですね
2. 貸借対照表に基づくチェックポイント
次に、会社の財務健全性を評価するため、貸借対照表を見ていきます。バフェットは、健全な財務体制を重視し、長期的な安定をもたらすかどうかを見極めます。
① 現金および現金同等物の保有状況は豊富か?
評価:〇(健全)
JTは豊富な現金および現金同等物を保有しており、財務の安全性が高いと言えます。突発的な出費や事業リスクにも十分対応できる体制です。
現金および現金同等物の推移(単位:億円)
年度 | 現金および現金同等物 |
---|---|
2023年 | 1,0402 |
2022年 | 8,669 |
2021年 | 7,217 |
2020年 | 5,388 |
2019年 | 3,572 |
2018年 | 2,821 |
- 解説:特に2020年以降、キャッシュの増加が著しく、JTが将来の不確実性にも対応できる強固な財務基盤を持っていることが確認できます。
② 棚卸資産は純利益とともに増加しているか?
評価:△(一部良好)
棚卸資産の増加は、企業が将来的な売上増加を期待していることを示す指標ですが、これも純利益と同様に2020年以降、回復基調にあります。
棚卸資産の推移(単位:億円)
年度 | 棚卸資産 |
---|---|
2023年 | 8,326 |
2022年 | 6,919 |
2021年 | 5,632 |
2020年 | 5,398 |
2019年 | 5,837 |
2018年 | 6,492 |
- 解説:棚卸資産は2020年以降、順調に増加しています。これは、今後の売上増加を期待している企業の前向きな姿勢を反映していると考えられます。
③ 長期借入金は少ないか?
評価:〇(リスク低い)
JTの長期借入金は、純利益の約2年分とリスクが抑えられた健全なレベルにあります。
④ 自己株式の保有状況
評価:〇(適正)
2024年2月13日時点で、JTは4,892億円分の自己株式を保有しており、株主への還元姿勢が強いことが伺えます。
⑤ 自己株式調整済み負債比率は0.80以下か?
評価:〇(健全)
バフェットの基準である自己株式調整済み負債比率0.80以下をクリアしており、JTの財務体質は非常に健全です。現在の比率は約0.65ポイントです。
⑥ 利益剰余金は増加しているか?
評価:〇(増加傾向)
利益剰余金は企業の内部留保を示し、長期的な成長に向けた投資資金となります。JTは一貫して利益剰余金を積み増しており、企業としての成長余力が見込めます。
利益剰余金の推移(単位:億円)
年度 | 利益剰余金 |
---|---|
2023年 | 31,923 |
2022年 | 30,899 |
2021年 | 28,638 |
2020年 | 27,837 |
2019年 | 27,505 |
2018年 | 26,604 |
⑦ 株主資本利益率(ROE)は高いか?
評価:×(安定しているも高くない)
ROEは株主が出資した資本に対してどれだけ利益を生み出しているかを示す指標ですが、JTのROEは安定しているものの、特段高い数値ではありません。
ROEの推移
年度 | ROE |
---|---|
2023年 | 12.4 |
2022年 | 12.3 |
2021年 | 11.8 |
2020年 | 12.0 |
2019年 | 13.2 |
2018年 | 14.3 |

貸借対照表では5勝1敗1分でした!
とても優秀なんですね!!
3. JTの事業内容
① たばこ事業
JTの主力事業であり、世界各国で展開されています。主要ブランドにはWinston、Camel、MEVIUSなどがあり、特に日本国内市場で圧倒的なシェアを持っています。
② 医薬事業
循環器、免疫、炎症などの分野における医薬品の研究開発と製造販売を行っており、代表的な製品に「コレクチム®軟膏」や「リオナ®錠」があります。
③ 加工食品事業
冷凍食品やパックごはんなどを展開しており、国内外で多様な製品を提供しています。代表的な製品に冷凍麺の「冷凍さぬきうどん」や、冷凍お好み焼の「ごっつ旨いお好み焼」、酵母エキス調味料「バーテックス」があります。
JTの売り上げ構成比は下記グラフにまとまっています。
売上収益構成比(2023年度)
出典:JTホームページ「JTグループの事業概要」

これを見るとJTはたばこ事業でほとんどのお金を稼ぎ出しているのがわかりますね!
4. 株主還元について
① 配当金
JTは高い配当利回りを提供しており、現在の株価水準では利回りは5%を超えることも期待できます。
② 自社株買い
自社株買いを積極的に行っており、株主還元姿勢が強い企業です。直近では2019年に実施していました。
取得期間 | 取得株式数 | 取得金額 |
---|---|---|
2019年2月~3月 | 17,787,600株 | 499,999,903,350円 |
2015年2月~3月 | 26,896,200株 | 99,999,695,750円 |
2013年2月 | 86,805,500株 | 249,999,840,000円 |
2011年2月~3月 | 13,437,000株 | 19,999,745,500円 |
結論
JTは、ウォーレン・バフェットの基準に照らしても、多くの評価ポイントをクリアしています。特に財務体質の健全さと配当利回りの高さから、長期的な安定収益を期待できる銘柄と言えるでしょう。たばこ事業が今後も安定したキャッシュフローを生み出す限り、JTは投資家にとって有望な選択肢の一つです。